最高裁判所第二小法廷 昭和33年(オ)650号 判決 1961年8月28日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人草光義質の上告理由第一点について。
論旨冒頭引用の原判決理由部分は、原判決の引用する第一審判決理由中の、「本件山林は登記簿上被告(上告人)の単独所有名義になつてはいるが、被告が昭和の初め頃これを買い入れるに際しては、原告(被上告人)から代金の半額を出して貰い、実質上は共有であつた」との認定が動かしがたいことの補足的な説示であつて、挙示の証拠から肯認できる。また原審が、地価と賃貸価格とに関する知識なくして判断したとか、あるいは原審に所論のような釈明義務違背があつたと認めるべき根拠も見出しえない。所論は、ひつきよう原審が適法に確定した事実にそわない事実を前提として原判決を非難するに帰し、採用するを得ない。
同第二点について。
和解契約は、相争う当事者が互に譲歩しあつて争いをやめる契約であるが、その和解に至る過程において、第三者があつ旋仲介するがごときことはなんらその妨げとなるものではない。原審の引用する第一審判決の認定によると、知夫村農業委員会の調停によつて、上告人の代理人中垣武と被上告人との間に民法上の和解が成立したというのであるから、右和解は、本件山林をめぐる紛争につき同委員会に所論いわゆる調停をなすべき職務権限の有無には関係なく、有効であると解すべきこと勿論である。
されば論旨は理由がなく、採用できない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田 克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)